店長の穴

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エピソード６　夢の中へ
　

いつも夢の話をするコがいる。
年齢差の甚だしい私との会話を成立させるためにあえてそんな話をしているのだと思った。
　（不憫よのぉ、確かに２０近くも歳が離れていれば話題もないよなぁ）
と、タイクツな夢の話にも相槌をうっていたのだ。
が、どうやら私に対してだけ夢の話をしていたのではないようだった。

正直言って、他人の夢の話ほど退屈なものはない。
将来の夢、というなら話は別だが、件のコが語るのはもっぱら「眠っている」時に見る夢のほうなのだ。
微に入り細に入り色の説明まで入って、実にリアルだがなにぶん夢の話なもんだから、そのコの願望やらその日に見たマンガの話やらが入り混じって、実に「凄い」話なのだ。
内心、カンベンしてくれと思いつつも、せっかく一生懸命「話」をしているのだからと相槌を打ちつつ聞くことになる。
それもこれも仕事がヒマだからいかんのだが。

一緒にシフトインするたびにこの有様なので、つい余計なお世話なことまで考えてしまう。
現実は楽しくないのか？
若くてそこそこの美貌で裕福でお金にも困ってなくて、それでも夢の話が忘れられないほど現実がつまんないのか？
現実は楽しいことばかりじゃないけど、いや実際苦しいことが多いけど、それだからこそ些細なことで幸せを感じたりできると思うのだが、これは楽天家の私だけの意見かもしれない。

夢の話もいいけど、たまには「現実」の話もして欲しい。オバサン相手じゃ話題にも困ろうが。
これからも夢の話を聞かされるたびに、
　（お〜〜い、還ってこ〜〜い）
と心の中でそのコに呼びかけるのである。