店長の穴

エピソード１６　過去の悪事、暴露す　

　どこの大型店もそうなのだろうが、「お客様の声」なる投書コーナーがある。
うちのショッピングモールも例外ではなく、お客の書いたいろいろなモノが各コーナーの担当者のコメント付で掲載される。
　言うまでもなくその「お客様の声」の大半は苦情であって、中にはトンデモない「苦情」も含まれる。

　「あそこの寿司屋のしょうゆで口がかぶれた」　だの、
　「混雑していて、注文の品が遅い」　だの、
　「先着の粗品を（もちろんタダ）貰おうと走ったら転びそうになった」　だの。

これらのトンデモ苦情にも律儀に店長なりチーフなりが回答をしたためたうえでの掲示となるわけだが、ここまでくると苦情というより「難くせ」「いちゃもん」言いがかりである。
　当然うちの店も例外でなく、本物の「苦情」や「言いがかり」のような投書もくるのである。

　さて、普段からあまり「苦情」は来ないのだが、ここ半年位の間そういったものがぜんぜん来ないね、とそういうことが話題になったとき、突然口止めされた上でフリーターＢに告白されたのだ。

　「店長にも、本人（Ａ）にも言っちゃだめですよ。
　実はこの間、名指しで（実名で）苦情がきてたんですけど、Ａさんが店長に内緒で破って捨てちゃったんです。
　　自分に直接関係無い苦情は店長に見せるのに、自分の分は勝手に捨てちゃうんです。今までも何回かあったんです。」

　のん気なもので、私は今まで「お客様の声」なる投書はショッピングモールが回収したうえで、各テナントの店長に直接渡されるものだと思っていたのだ。

　「違いますよ。　バックヤードにあるテナントのポストに（鍵なし）直接放り込んであるんです。
　　で、店長に見つけられる前にちょくちょく覗きに行くんですよ。」

　・・・なるほど、そうであったか。　まめなことよのう。
　しかしどうせ「証拠隠滅」するのなら、誰にも見せずに廃棄すればいいものを。
　そういえば、「破って捨てようと思ったんですけど」　とあきらかに破った後をセロテープで貼り付けた苦情の用紙を私に見せたことがある。
　その時「捨てちゃっていいですよね、いいですよね？」　としつこく聞いてきたことがあったが、「別にどっちでもいいよ、任せる（どの道捨てようと思ってたんだろ～に）」　と私の意見は保留にしておいたことがある。

　なるほど、共犯者が欲しかった訳だ。
　そのほかにもほかの子からいろいろな話が漏れ聞こえてきて、最近メッキが剥がれてきたフリーターＡ。

　次回その彼女に初めてブチ切れたのです、ワタクシ。